きぽニズム

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【読書録02】『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです』村上春樹

読書録2本目です。今回は言わずと知れた名作家、村上春樹のインタビュー集です。

 

 

村上作品はそこそこ好きで『海辺のカフカ』や『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』なんかは楽しく読んだ記憶があります。

あの「著者のメッセージがなんともよくわからない感じ」について賛否両論はあるのでしょうが、純粋に「次に何が起こるのだろう」という楽しみで読めるところが村上作品の良いところだと思います。
まあわかりやすい教訓を得たいなら自己啓発書を読めば済むわけで、小説の魅力は解釈の多義性そのものにありますよね。

ではいきましょう。

 

 

 

【概説】インタビュー集

村上春樹が自身が受けたインタビューをまとめた「インタビュー集」。海外のインタビューが多い。
・どのように小説を書いているのか、村上春樹が影響を受けた小説などが書かれている。

 

【注意点・読み方】作品の解釈本ではない

・作品の解釈(「○○という小説の主人公のあの行動はこれのメタファーなんですよ」みたいな)を話した本ではない。
・なので村上作品の意味が知りたい!って人には向いていない。
・見た目ほど内容は厚くない。それぞれが独立したインタビューのまとめ本なので、同じことが何回も書いてあったりする。
・全然気を張らずにさらっと読める!

 

【効用】村上春樹のルーツと小説に向かう姿勢

村上春樹のルーツがわかる。一人っ子だったこと、海外文学を読み漁ったこと、大学卒業後はジャズクラブの経営で肉体労働に明け暮れたこと...
村上春樹が小説を書く上での姿勢がわかる。これについては次で詳述。

 

【感想】村上春樹に学ぶ仕事論

このインタビュー集から学べる最も大きいことは、「人生において何事かを成し遂げるには何が必要か?」ということだと思う。要は仕事論だ。それを3点に絞ってまとめてみた。

 

 ①何かを始めるのに遅すぎるということはない。

私は村上春樹は学生時代から小説を書いていたのだと思っていたが、実際に小説を書き始めたのは29歳の時だったそうだ。
(大学卒業後は就職せず、ジャズクラブを経営していた。)もちろんそれまでに彼は沢山の小説に親しんでいたし、小説を書くことの才能はあったのかもしれない。
しかし、小説を読む力と書く力は別のものであるし、実際に書いてみなければ才能があるかどうかなんてわからないだろう。
自分の感性に正直に、タイミングをものにすることの大切さを学ぶことができる。

 

 ②タフな体を持て。

村上春樹は小説を書く時、毎日4時頃に起き、4~5時間ものを書き、その後は10kmほど走りに出かける。
小説を書くことは体力を使わないイメージがある。しかし、小説を書くことは「自分の心の中の毒に向き合う」作業であるため、その毒を処理するために
強靭な肉体が必要なのだと彼は言う。
ちなみに私も社会人になってデスクワークのきつさに気付いた。体を動かさない仕事というのは生き物の原理に反しているし、危険なのだ。
普段体を動かさない人間ほど、タフな体が必要だ。

 

 ③自分なりの目的意識を持ち行動しろ。

村上春樹は小説を書くにあたっていくつかの目的意識を持っている。
例えば、彼はドストエフスキーカラマーゾフの兄弟』のような、とにかく長い、重い作品を書きたいと思っている。(彼はそれを「総合小説」と呼んでいる。)
そしてそのために、短編、中編、長編と異なる長さの小説を書いていろいろな技術を身に着けているのだ。

また、個々の小説を書くにあたっても、手法上の課題をいくつか設けるという。
例えば、彼は一人称視点の物語で小説の書き方を学んできたので、三人称でものを書くことに慣れていなかったという。
しかし、これは長く重い「総合小説」を書く際に足枷になる。
そこで、『ノルウェイの森』では、「三人で話すシーンを沢山入れる」、『ねじまき鳥クロニクル』では「語りや手紙など色々な視点を盛り込む」など、一人称の限界を克服するために課題を立ててきた。
そして、短編集『神の子どもたちはみな踊る』で完全な三人称の小説を書けるまでになっていく。

このように、自分の達成したいゴールに向けてやるべきことを一つ一つやっていくことが、偉大な仕事をする上で大切なことなのだ。

 

今回はこんな感じになりました。村上春樹ってマジでタフな作家なんだなってのが全編通しての印象です。私も彼にとっての小説みたいなものを見つけたいなと思いますね。